高知を拠点に、全国各地で経営・事業計画 (ビジネスプラン)策定、商品開発、販路開拓などの経営支援を行う、中小企業診断士/経営コンサルタントの茂井康宏です。
先日、ある飲食店の経営者からこのような話を伺いました。
「歓送迎会の問い合わせはある。しかし、以前のような大人数の予約が入らない…」。
確かに、かつてのような30〜40名規模の宴会は減少しました。
しかし、需要そのものが消滅したわけではありません。
現場を詳しく見てみると、むしろ「形を変えて」需要が動いていることが分かります。
違和感の提示|なぜ宴会は減ったように見えるのか
今でも「大人数の団体客」を前提に歓送迎会の集客を考えているお店は少なくありません。
しかし、近年の歓送迎会はその構造自体が変化しています。
統計によれば、職場の飲み会を開催する割合は、2017年の約75%から2025年には約60%まで低下しています。
これだけを見ると市場が縮小しているように思えますが、注目すべきは「出席率」です。
飲み会が開催された場合の出席率は87.9%に達しており、「回数は減ったが、開催される際は参加する」という傾向が強まっています。
特に送別会や歓迎会は、職場における重要な節目として根強く残っているイベントです。
気づきの提示|宴会は減ったのではなく「分解」された
ここで見落としてはいけないポイントがあります。
歓送迎会の需要は消えたのではなく、「一度に全員が集まる宴会」から「小さく分かれた宴会」へと形を変えたのです。
◯同じ職場内でも、部署やチームごとに開催
◯特に仲の良いメンバーだけで個別に集まる
◯公式行事ではなく有志による少人数で開催
その結果、宴会需要は「少人数×複数回」へと分解されました。
店舗側から見れば、かつての「大宴会」が消えたため、需要そのものが減ったように錯覚してしまうのです。
なぜそうなるのか|参加者心理の4つの変化
送別会は「お世話になりました」を形にする場です。
この背景には、現代の歓送迎会特有の心理的要因があります。
1.感謝の可視化
感謝の気持ちは言葉だけでは伝わりにくいものです。食事の場を設けることで、想いを「形」にしたいという心理が働きます。
2.関係性の維持
異動や退職で物理的な距離ができても、縁を切りたくない。歓送迎会はそのための「区切りの儀式」となります。
3.失礼の回避
お世話になった人を何もせずに送り出すのは気まずい。何かしなければ失礼にあたるのではないか、という体裁意識です。
4.迷いの回避
繁忙期ゆえに、店選びや段取りに時間をかけたくないのが幹事の本音です。「ここなら間違いない」という選択肢を求めています。
実務でのヒント|「小さな宴会」を意識する
変化した需要を確実に取り込むためには、例えば以下のような設計が考えられます。
◯4〜6名向けの小規模専用コース
◯90分などの短時間集中型プラン
◯乾杯ドリンクやメッセージプレートの整備
◯花束手配・送別ケーキ・写真撮影サービス
ポイントは、幹事が抱える「調整の負担」や「失敗したくない」という不安、そして参加者の「形式的な大人数より、親密な少人数で語り合いたい」という心理をいかに汲み取るかです。
幹事と参加者双方の心理的ハードルを下げ、満足度を高めるプランを用意することで、部署単位や有志単位の「分解された宴会」を呼び込める可能性が高まります。
注意点|大宴会前提のモデルからの脱却
一方で、苦戦している店舗には共通の失敗パターンが見られます。
・大人数用の大皿コースのみを用意している
・料理の質よりもボリュームを重視している
・回転率や短時間での利用を想定していない
この設計のままでは、現代の「小さな歓送迎会」を取り逃してしまいます。
歓送迎会の需要は、本当に減ったのでしょうか。
それとも、提供する側の「見え方」や「構え方」が、変化に取り残されているだけなのでしょうか。
[ビジネスプラン・商品開発・販路開拓]
株式会社プランコンサルティング
代表取締役社長・中小企業診断士 茂井康宏
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